ティム・サトミ作品展

——— 朔太郎を刺繍する ————


2018年5月7日(月) - 5月19日(土)

11:30~19:00(最終日17:00迄)※日曜休廊




ティム・サトミ


1972年文化服装学院師範科、ハンディクラフト科卒業。欧風刺しゅうを習得、のち日本刺しゅうを独学。1973年京都で「アトリエ・ティム刺しゅう教室」誕生。1975年「第1回アトリエ・ティム展」開催、以降現在にいたるまで生徒さんとの共同展をさまざまなテーマで開催。1970年代には衣装やファッション小物を作ることが多く、アーチスト草間彌生さんのドレス、ピアニスト島田璃里さんのドレス、歌手薩めぐみさんのブローチなどを手がける。1982年、活動拠点を東京に移し、アパレル業界の依頼でコスチュームの刺しゅうや毛皮のアレンジを手がける。この頃クリエイター、アパレル業界関係者、音楽家などにファッション作品を多数制作。1984年NHK番組「ビデオ・アート」のスタジオ・セッティングなど空間にかかわる美術装飾。1990年活動拠点を京都に移し、アトリエ・ティム刺しゅう教室を再開。かたわら呉服業界のための着物地、帯、茶人のための袱紗など、「和」のアイテムにティム流の刺しゅうをマッチさせる制作を手がける。1996年「森のバロック・ウェディングドレスショー」でウェディングドレス、庭園インスタレーションなど。2000年代は、薔薇、ブリコラージュ、人形、毛皮などさまざまなテーマでアトリエ展を開催。2014年雑誌「アイデア」365号綴じ込み付録で「ティム・サトミの作品」紹介。2015年東京で「永楽屋てぬぐいメタモルフォーゼ」展の衣装とオブジェ制作。同年、アトリエ40周年記念展開催。

2017年大阪(LADS GALLERY)にて「ティム・サトミ 刺しゅうの森」展を開催。

ティム・サトミの生まれた郡上八幡という地は、岐阜の山また山の間のポツンと開けた奇跡的地形でもって、魚の形をした、あたかも神様のおくりものみたいなおしゃれでピュアな人達が暮らし、街中をたえまなく流れる水音が心を浄化して、なごませてくれる風土が自然と一体となって、五感を豊穣の水槽の中で、育まれた“知”がティム・サトミの魔術的な才能の源泉であるかもしれない。




手の動きの記録。

それが繍うという表現だ。

ティムの作品は、布という大海原に束の間現れる身体の航跡波である。

ホイジンガが言うように、言葉は詩から生まれ、社会は遊びから生まれたのだとしたら、「詩の匂いを刺繍する」ティムの作品は、糸というラインが記

述なのか、あるいは線描なのかという根源を問う作業だろう。

それは彼女が作品の中に繍い込めたもっとも大切で繊細なメッセージである

                                                                                                  ………………………萩原朔美氏

京都で活動する刺繍作家・ティム里美の「刺繍」は、糸を編むことでパターンや図像を描きだすという、古典的な意味の刺繍ではない。それは古今東西の様々な素材やオブジェを糸で刺し、つなぎ合わせて生み出される、美しくも魔術的な統合物である。

「テクスト」がその語源において「編まれたもの」を意味し、「編輯」が「集めて編む」ことを意味するように、「糸を織る」「糸でつなぐ」という行為は、芸術や文化の立ち上がりに深く関わってきた。

また「絵」という漢字は色糸をあわせて刺繍の模様をつくることに由来するというのだから、ティム里美の刺繍は古代からの編輯の魔法をただしく現代に継承しているともいえるだろう。

時間や空間を超えるデジタルの情報網によって平坦になってゆく世界に対し、ティムの刺繍はその針の軌跡のなかに幾重にも折りたたまれた時空の想像力を立ち上げる。

                                                      
                                   …………………室賀清徳(雑誌「アイデア」編集長)